こんにちは!
皆さん。今日はマクロ経済学の中でも重要な概念である「LM曲線」について解説しましょう。さらに、LM曲線が流動性にどう影響するのか、その点も考察します。
LM曲線とは?
LM曲線は、マクロ経済学のIS-LMモデルの一部で、貨幣市場の均衡を示します。
具体的には、貨幣供給と貨幣需要が一致するときの、国民所得(GDP)と利子率の関係を表します。下図に示します。
この曲線は、通常上向きに描かれ、国民所得が増加すると、貨幣需要も増え、その結果利子率も上昇することを示しています。
LM曲線のメリットとデメリット
メリット
政策分析の手助け
LM曲線は、財政政策や金融政策が経済全体にどのような影響を及ぼすかを理解するのに役立ちます。
デメリット
現実の複雑さを過小評価
IS-LMモデルやLM曲線は、現実の経済の複雑さを完全には捉えきれていません。特に、中央銀行が利子率を直接制御する現代の金融政策環境では、LM曲線の有用性は限定的です。
LM曲線はどう導くのか?
まず、LM曲線を理解するための基本的な前提をおさらいします。LM曲線は、貨幣市場(貨幣供給と貨幣需要)が均衡するときの利子率と国民所得の関係を表します。簡単に言えば、貨幣市場の均衡状態を表す曲線です。
それでは、数式を使ってLM曲線を導出してみましょう。
数式を用いた導出
貨幣市場の均衡は以下の条件で表されます。
M/P = L(i,Y)
ここで、 Mは名目貨幣供給、 Pは物価水準(価格), Lは貨幣需要関数で、 iは名目利子率、 Yは実質所得(GDP)を表します。
貨幣需要
利子率と所得の関数として表されます。
ただし、通常では利子率と所得の関係の2変数において直接的な関係性が存在しないため、実質国民所得と貨幣需要、名目利子率と貨幣需要の関係性から導きます。
所得が増加すると、取引需要が増加し、貨幣需要も増加します。
一方、利子率が上昇すると、保有貨幣の機会費用が増加し、貨幣需要は減少します。
上記、貨幣需要の関係式から名目利子率-実質国民所得の関係式を導くと以下のような表になる。
実質国民所得 Y と名目利子率 r の関係式は以下の通りです。
r = r* + π* + α(π – π*) + β(Y – Y*)
ここで、 rは名目利子率、r*は中央銀行の目標実質利子率、 πは現在のインフレ率、 π*は中央銀行の目標インフレ率、 Yは現在の実質GDP(所得)、 Y*は潜在的な実質GDP(経済がフル雇用で稼働していると考えられる所得水準)、 αとβは正の定数で、中央銀行がインフレと産出ギャップにどれだけ反応するかを示しています。
この数式は、中央銀行が所得(具体的には産出ギャップ)とインフレに基づいて利子率を調整する様子を表しています。
ただし、これは一つの理論的なフレームワークであり、実際の中央銀行の行動はこれに厳密に従うわけではありません。また、この数式は所得と利子率の間に直接的な関係性を示しているわけではなく、中央銀行の政策反応をモデル化したものであることを理解してください。
貨幣供給
中央銀行によって決定され、一般的には固定とされます。したがって、M/P(実質貨幣供給)は一定です。
よって、LM曲線は?
これらの条件から、LM曲線は以下のように表されます
L(i,Y) = M/P
この式は、貨幣市場が均衡状態にあるとき、貨幣需要(L(i,Y))は実質貨幣供給(M/P)に等しいことを示しています。
この式から、特定の貨幣供給水準に対して、所得と利子率の関係を描くことができます。
具体的には、所得が増加すると、貨幣需要が増加します。
その結果、利子率を上昇させることで貨幣市場の均衡が保たれます。これがLM曲線の導出となります。
いまいちど、LM曲線とは
貨幣市場の均衡状態を示すものであり、経済全体の規模(国民所得)と利子率との関係を描写します。国民所得が増えると貨幣需要も増え、その均衡を保つためには利子率が上昇する必要があります。これがLM曲線が右上がりである理由です。
また、中央銀行が貨幣供給を増やす場合、LM曲線は右にシフトし、利子率が下がります。これにより、貨幣政策の変更がLM曲線をどのように動かすかを理解できます。
LM曲線と流動性のわな
LM曲線と流動性のわなとはどういう関係があるのでしょうか。
流動性のわなとは??
経済がデフレーションや高失業率などの問題に見舞われ、通常の金融政策が効果を発揮しなくなる状況を指します。
この「流動性のわな」は、ゼロ金利政策下で中央銀行が更なる金利の引き下げが不可能な状況を指します。
この状況では、マネタリーベース(中央銀行が発行する通貨と銀行預金)を増やしても、追加的な貨幣は銀行の預金として保持され、経済全体の需要は増えない可能性があります。
このため、金利の下げ方向への政策効果が限定され、経済の刺激が難しくなります。
LM曲線の観点から見ると
流動性のわなは利子率がゼロに近い、またはゼロの状況を示します。これは、LM曲線が水平になり(つまり、どのような国民所得に対しても利子率がゼロになる)、貨幣政策の効果がほぼ無くなる状態を示しています。以下に図を示します。
LM曲線が水平になると、貨幣供給を増やしても利子率は変わらず、したがって投資需要も変わらないため、GDPはほとんど増加しません。
したがって、流動性のわなとは、基本的にLM曲線が水平になり、貨幣政策が経済を刺激する能力を失う状況を指します。
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まとめ
LM曲線は、マクロ経済学における重要な概念の一つであり、経済全体の動きを理解するための重要な道具です。
しかし、現実の複雑な経済環境を捉えるには限界があり、特に金利がゼロに近い状況、いわゆる流動性のわなの状況では、その限界が顕著になります。これらの概念を理解することで、経済の動きや政策決定に対する理解を深めることができます。
次回は。。。
このLM曲線と流動性のわなを更に深堀りし、どのような状況で政策決定者が直面するか、またそれにどう対処すべきかについて詳しく見ていきましょう。経済の複雑な世界を一緒に解き明かしていきましょう。次回もお楽しみに!