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このページでは、誰でも1分間で理解できるように、組織再編の手法の1つである、事業譲渡に関して事例などを交えて、解説します。
事業譲渡
企業が所有する特定の事業部門や事業全体を、別の企業に譲渡することを指します。これは、企業が経営戦略を見直すために行うことが多く、業績不振に陥った事業部門を別の企業に売却することで、資金調達や事業再生を行うことができます。
例えば
企業Aが飲料事業、食品事業、化粧品事業、医薬品事業の4つの事業を持っているとします。
しかし、企業Aは医薬品事業を重点的に展開していくことに決め、他の事業は売却することにしました。この場合、企業Aは飲料事業、食品事業、化粧品事業を別の企業に譲渡することができます。
譲渡価格をP、売却する事業の純資産額をNA、譲渡する事業の減損損失をLとすると、譲渡の収益は以下のように計算されます。
収益 = 譲渡価格 – 売却する事業の純資産額 – 減損損失
事業譲渡のメリット・デメリット
以下に、事業譲渡のメリットとデメリットを記載します。
メリット
以下に、事業譲渡のメリットをまとめた表を記載します。
メリット | 説明 |
---|---|
資金調達が可能 | 業績不振に陥った事業部門を売却することで、資金調達ができる。 |
事業集中による効率化 | 売却した事業部門のリソースを、他の事業に集中させることで、経営効率が上がる。 |
リスク回避 | 事業部門の不振による損失を回避することができる。 |
事業の専門化 | 売却した事業部門に特化した企業が買収することで、その事業の専門化が進む。 |
デメリット
以下に、事業譲渡のデメリットをまとめた表を記載します。
デメリット | 説明 |
---|---|
従業員の不安定化 | 売却された事業部門の従業員に不安が生じる。 |
売却益の課税 | 売却した事業部門の譲渡益には、課税がされる。 |
事業戦略の方向性の変更 | 売却した事業部門が、後に競合他社に買収された場合など、事業戦略の方向性が変わることがある。 |
経営判断の誤り | 売却した事業部門が後に成長した場合、その経営判断の誤りが露呈することがある。 |
事業譲渡の流れ
事業譲渡の流れは以下フローのようになります。
事業評価
譲渡元の会社(事業を譲渡する側の会社)が、譲渡する事業部門の評価を行います。評価の対象となるのは、事業の規模、市場状況、資産、人材、顧客基盤などです。
譲渡条件の検討
譲渡元と譲渡先が、事業譲渡の条件について協議します。譲渡価格、支払い条件、譲渡される資産や債務の範囲、譲渡先の従業員の引き継ぎなどが検討されます。
事業譲渡契約締結
事業譲渡の条件が合意されたら、譲渡元と譲渡先が、事業譲渡契約を締結します。契約内容には、譲渡条件や譲渡日程、引き継ぐ資産や債務、従業員の引き継ぎなどが含まれます。
債権者の同意
事業譲渡によって債務が譲渡先に移転する場合、債権者の同意を得る必要があります。
承認・届出
事業譲渡は、一定の規模以上の場合には、独占禁止法などに基づく承認や、税務署への届出が必要になる場合があります。
譲渡実行
事業譲渡の実行日に、譲渡元は引き継ぎ手続きを行い、譲渡先は事業を引き継ぎます。
アフターケア
事業譲渡後も、譲渡元と譲渡先は、従業員の問題や顧客対応など、引き続き対応する必要があります。
債権者の同意について
債権者(貸主)は債務者(借主=返済予定者)に対して債権(貸主が借主に何らかの義務を負わせる権利)を有しており、債務者(借主=返済予定者)に対して債務履行(返済)を求めることができます。
しかし、
債務者(借主=返済予定者)が譲渡によって変更される場合、債務者(借主=返済予定者)が履行不能になるなどのリスクが生じる可能性があります。
そのため、
債権者(貸主)は債務者(借主=返済予定者)の変更に対して、同意を与える必要があります。
例えば
以下のような、事業譲渡の場合、債権者の同意が必要です。
債務譲渡による事業譲渡
債務譲渡による事業譲渡では、譲渡元の会社(事業を譲渡する側の会社)から譲渡先の会社(事業を譲り受ける側の会社)に債務(借金返済権)が移転します。この場合、債権者(貸主)の同意が必要となることが多いです。
債権者(貸主)の同意がない場合、債務(借金返済権)が引き継がれないため、事業譲渡が成立しません。
会社分割による事業譲渡
会社分割による事業譲渡では、譲渡元の会社(事業を譲渡する側の会社)が新たに設立する会社に事業を譲渡し、その後、新たに設立した会社を譲渡先の会社(事業を譲り受ける側の会社)に譲渡します。
補足:株式譲渡による事業譲渡
原則、株式譲渡による事業譲渡では債権者への同意は必要ありません。
しかし、譲渡先会社が譲渡価額を超える債務を負担する場合には、その債務の支払い状況が悪いと、債務不履行のリスクが高まるため、債権者にとってリスクが高まる可能性があります。
その場合には、特定の契約によっては債権者の同意が必要な場合があります。
まとめ
事業譲渡とは、事業の承継や新規事業の立ち上げなど、様々な目的に利用される手段です。
メリットとしては、業績改善や資金調達などが挙げられます。一方、デメリットとしては、納税問題や契約書の締結、資産の評価、業務の停滞などがあります。
事業譲渡によって債務が移転する場合、債権者(貸主)の同意が必要となる場合がありますが、債権者保護手続きが必要とされるわけではありません。